GINZA SIX 裏 / レナ・レスボワール 上
03-3569-8020
address
東京都中央区銀座7-11-11 長谷川ビル4階
time
月・水・金 11時〜
完全予約制
メイン画像

vol.16 看板

私は、診療所を埼玉と東京に持っています。
東京の診療所は、銀座の真ん中にあります。
その銀座という地の利のおかげで、
ひょんな事からある有名な会社の会長さんと知り合いました。
(注)暇な時は、近くのレストランや食堂で昼食をとり、
ご近所に顔を売るようにしています。
これは大事なセールス法です。
彼は私が歯科医と知ると、突然、現在進行中の歯科治療の悩みを打ち明けられました。
どうも重症の感じがしますので、私の診療所へお誘いし、レントゲンを撮り、
現状で判断できる事、この段階で私のやれる事を説明しますと、
会長さんは拝むようにして、「ぜひ、やってくれ!」とおっしゃいます。
そこで私は、1時間程、丁寧に咬合調整をしました。
すると
「あ~あ、楽になった。有難う」
と帰られて、すぐに立派なお菓子と近くの駐車場のタダ券を一杯お持ちになられました。
次の日も、その次の日も、彼のかかりつけの歯科医に迷惑がかからないように
気を遣いながら私なりにフォローしました。
そして、
「そこでの治療をお止めになって、こちらへ来ていただけませんか?」
と頼んでみました。
すると会長さんは、
「すごい高額を払ってしまった。
それに君がやってくれたことを、あの歯科医がどう思うか、
  
 その反応を確かめてみたい!」
とおっしゃったのです。
しばらくして、笑いながら来院されました。
彼のかかりつけの歯科医は、私のやった咬合調整を単に歯ぎしりの結果と思い、
わざわざ特製のマウスピースを作ってくれたそうです。
 それからもいろいろあったのですが…エトセトラ…。
ある日、会長さんは、私にこんな提案をなさいました。
「ここの看板は、趣味に走り過ぎている。
 遊び人風のイメージ(?)があるので、真面目な歯科医院に見えない。
 
 看板に個性を出してはいけません。
 もっとスッキリと誰が見ても拒絶反応が出ない看板にしなさい」
 
そして2ヵ月程過ぎた頃、当医院の看板は(総て会長さんのデザインで)
以前の看板から180度転換し、個性は消えましたが大変スッキリとしたものになりました。
ついでに5階の医院入り口のガラスのドアも張り替えました。
更に付け加えて、最も重要な事があります。
会長さんは、看板にこんな一言を書き加えました。
『現状の治療にお悩みの方は、お気軽にご相談下さい』
 そしてこう言われました。
「僕は、本当に苦しんでいた時に、この看板を見たら、絶対飛び込んだと思う。
 歯科治療で困っている患者さんを救うためにも、この一言は必要です」
 
更に、
「僕はどんな辛い時も〈災い転じて福と成し〉て来たが、
 あの歯科医にかかった事は、僕の人生において〈一生の不覚〉であったと思う。
 しかし、君に会って、災い転じて福と成った。有難う……」
 
私はワナワナと足が震え、身が引き締まりました。
私が〈一生の不覚〉と言われたらどうしよう……。
私が福だなんて……。
それからすぐに年末になり、年が明けました。
通りがかりの方が飛び込みで来院され、会長さんの言われたとおり患者さんが増えました。
私が会長さんの“福”になった以上に、会長さんは私にとって“福の神”になりました。
そして、改めてこれからもいい仕事をしてゆこうと、“天の神”に誓いました。
 めでたし……
     めでたし……

カテゴリー:天Mama Style  投稿日:2009年3月6日