天ママStyle vol.90 “「規則ですから…」”

 4歳児の治療をしました。治療が終わり、子供をお母さんに渡すと「偉かったわねぇ~」と子供に笑いかけ、私には「お疲れさまで~す」の一言!
 オイオイ、こういう時はその後「ありがとうございました」と付け加えるべきじゃないですか。それに偉いのは子供ではなくて治療した私です!

 お買い物をすると必ず「1万円からお預かりします」と訳の分からない言葉がついてきます。私は預けたつもりはないし、その『から…』という意味が分かりません。この場合は「1万円ですね」の確認だけでいいと思うんですけれど…。その『から…』が聞きたくないのと、マイレージポイントを貯めるために、最近クレジットカードを使う頻度が増えている私ですが、今度は必ずレジで「何回払いですか?」と聞かれます。
 “アホか! 3,200円をどうやって分割払いにするんだ!”と言いたいのをグッと堪えて「1回です」と答えますが、本音は“分割払いにする程の金額じゃあないでしょう!”“プラチナの人は分割はしませんが…”“失礼ですよ、私が分割する人に見えますか?”と声を荒げてしまいそうになっています。
 ある時、本当にレジの方にこう言ってしまいました。
「あのね、プラチナのお客様にはプライドを傷つけないように、当たり前のように『ご一括払いですね』と言いなさい。
 事情のある方は何回払いか言ってくださいますよ。分割が当たり前のように聞かれると気分が悪いものです」すると「規則ですから…」
「アホか!」
 いつからか、きっとコンビニができた頃からか、誰も、誰にでも同じ接遇を! という考えのもと、すべてマニュアル化してしまった結果、心の通う対応が失われてしまったようですね。

 昨年から、当医院の税理士事務所に電話をすると、やたら明るい声で「お電話ありがとうございます。●●税理士事務所の××です」と全員が電話口で言うようになりました。
 通常、税理士事務所に用がある時点で楽しい事はなく、暗い気分で電話するものです。
「はい、お電話ありがとうございます!! ●●税理士事務所…」と例のごとく、お決まりの枕詞……キレた私は叫んでいました。
「おたくの事務所への用件は、気分の落ち込む事しかないのに、何が嬉しくて、“お電話ありがとうございます”ですか?! 嫌味ですか?」「いいえ、規則ですから…」「では病院や葬儀屋に電話口で“お電話ありがとうございます”と人の不幸を喜ぶかのように言われたら、“待っていたのか?!”と腹が立つのが分りますか?」「はい、規則ですから…」
「分かってないです!
 その規則を変えなさい。枕詞は“おはようございます”“こんにちは”にしなさい!」
 2、3日後に改めて電話をしました。するとまた…
「お電話ありがとうございます!!…」から始まったので、私はまた怒鳴ってしまいました。
 その2、3日後に電話をすると、相手方は一言も発しませんので、こちらから「●●事務所ですか?」と聞くと「ハイ、そうです…」と暗い返事。
 きっと私の診療室の電話番号が登録されて、受話器を取る前に私からの電話だと分かったに違いないので、さらに頭にきて、「さっさと名乗りなさい!」とまたまた叫んでいました。

 『規則』という言葉にがんじがらめになることは、思考回路を動かさなくて、生きる上では楽なのかもしれませんね。

 私達歯科医は患者さんに「痛い!」と言われた時、ズキズキか、冷たい時か、熱いものにか、ツンツンした痛みか、食べる時なのか等々、痛い症状を伺い、その痛みの種類で診断の予想がつきます。
 ところがです。
ある時、私が10日程腹膜炎を併発した盲腸で入院した事があります。
 術後はじめての回診時に、数名の先生が私にこう聞きました。
「ところで天井さん、痛みますか?」
「もちろん痛いです」「どのくらいですか?」「どのくらいと言われても…」「では、⑩のうちのどれくらいの段階ですか? ④とか⑥とか」「その⑩の意味が分かりませんが…」「だいたいでいいので、規則ですからお答えください!」
「アホか!! 身体の痛みを数値になおして、どういう意味があるんですか? 痛いんですよ。痛い、の! とにかく痛いんです、こういうのを⑩と言うんですか!!」

 点滴を見た先生が、声を上げました。
「すみません、痛み止めを入れ忘れていました!!」

 私、絶句!!
 どういう規則だっちゅーの!

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